日誌67 冒険活劇・ちかきのこ/モモ
手に汗にぎる冒険活劇、たけきの藩国プレゼンツ『ちかきのこ』
はじまるよ!
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午前4時、たけきのこ政庁前に三つの影があった。
一人はタキシードを着た中年で、正装した上に何故か工事用のヘルメットを被り腹巻きを巻いている。
もう一人は忍者装束の男で、残るひとりは褌一丁に靴下というエキセントリックな出で立ちである。
「プルート、こんな時間に呼び出して何の用だ?」
忍者装束の男が問う。
プルート呼ばれた腹巻きの男は、もったいぶって咳払いした後口を開いた。
「突然だが探検隊を結成する。隊長は私だ!」
「・・・」「・・・」
無言で帰ろうとする二人。
「いや、待て。確かな情報だ。24時間前にマッパーのひわみさんが地下施設に新たな階層を発見した。12時間前にはすでに先発隊が派遣されている。」
「聞いていないぞ。」
「我ら3人に対しては箝口令が敷かれていたようだ。更衣室で偶然、ていわいさんに遇ってな。」
忍者装束にヘルメットを投げてよこす腹巻き。
「なるほど、風紀委員の仕業か。吏族連中には奴らの息がかかっているからな。しかし、さすがに新国民までは箝口令が及んでいなかったわけだな。」
「鋭いなムーン。」
「・・・なぜ深夜の更衣室に貴様がいたのかはあえて聞くまい。」
ヘルメットをキャッチしてにやりと笑う忍者装束。
「同時に発見された古文書は未知の古代文明の遺跡の存在を示唆しているらしい。・・・どうでもいいがマーキュリー、その格好寒くないか?」
マーキュリーと呼ばれた褌の男は真顔で答えた。
「どれだけ寒くても、やるべきことがある。全てはギャグのために!」
「そうか・・・、その心意気や良し!」
がっしり握手する褌と腹巻き。
「しかし、なぜ風紀委員の連中は遺跡の存在を我々から隠したんだ?」
「つまり、そこにアレがあるということだろう。」
「ふふん。なるほど。」
「何故それを我々に伝える?いつものお前なら抜け駆けしそうだがな?」
「ふん、信用されてないな。我々は既に大きく出遅れている。お互いに足を引っ張るのは得策ではない。ここは協力しようではないか?」
「たしかに風紀委員の連中に先を越されるのはまずいな。アレの価値を分からん奴らは何でも直ぐに洗濯しようとするからな。」
「それで作戦はあるのか?」
「まあ、待て。まずは腹ごしらえだ。」
腹巻きの中から魔法のようにタッパーを2つ取り出す。
「・・・便利な腹巻きだな。何だそれは?」
「たけきのこ藩王が作ったカレーだよ。FVBで作ってた奴だ。もったいないんで冷凍しといたのだ。」
「藩王の手作りカレーかそりゃいいな!」
色めき立つ忍者と褌。
早速スプーンを口に運ぶ。
「ぶほっ!」
「ぐはっ!」
口にした瞬間、光る液体を吹いて倒れる二人。
「な、何を食わせた・・・。」
「カレーだよ。ただの。しかしサイボーグ用だから生身の君たちには少し刺激が強いかな?」
「はじめからこれが狙いか・・・。」
「なんのことやら。」
すでに二人からの返事はない。
「おや、どうやらお二人は体調が優れないようだ。仕方ない探検は私に任せていただこう。」
悪魔の微笑を浮かべながら立ち去ろうとする腹巻き。
ふと、何かを思い付き立ち止まる。
「それにしても恐ろしい効果・・・。たかがカレーにガソリンや鉄屑が入っている程度でここまで効くのか?」
自問自答する腹巻き。
「口にすれば直ちに気を失う。私はこれに似たもの知っている!」
何かをひらめいて顔を上げる。
「気の遠くなるほどの快楽・・・、そういう事か!謎は全て解けた!。」
失神している二人のそばで、ひとり盛り上がる腹巻き。
「フフフ・・・これだけの手がかりで気付いてしまうなんて。恐い!自分の才能が恐い!」
ひとりでぶつぶつ呟く腹巻き。
通りがかったパンダが、おびえて避けて通る。
「たけきのこ藩王の分身たる靴下を煮込んだカレー、つまりそれがたけきのこ入りカレー!」
腹巻き絶好調。
叫んでタッパーを手に取り、スプーンを口に運ぶ。
「・・・!」
光る液体を吹き、首をがくがくさせながら満足げに笑う。
そのまま倒れた。
・・・そして誰もいなくなった。
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次はこんこさん。
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